TAMRON SP 15-30mm F/2.8 Di VC USD (A012N)は2014年に発売されたレンズで、星空撮影に最適なレンズです。
高価なレンズを購入しなくても、このレンズ一本でほとんどの星空撮影のシーンを網羅でき、星空撮影の最前線で活躍できるポテンシャルを秘めたおすすめのレンズです。
このレンズを2017年に購入してから様々な場所で星空撮影をしましたが、優れた解像感や低価格帯により、非常に満足感の高いレンズです。
このレンズがお勧めの理由を検証していきます。
※現在は生産が終了しており、後継種の「TAMRON SP 15-30mm F/2.8 Di VC USD G2 Model A041」がありますが、このレビューは旧型レンズとなります。
TAMRON SP 15-30mmF/2.8はこのレンズ1本で幅広い星空シーンで使える最強クラスの星空レンズです
今では星空撮影をする際は必ずこのレンズを持っていくほど、最前線で活躍してています。
私はニコンD750にこのレンズを付けて星空撮影をしていますが、毎回とても安定して星空撮影ができています。このレンズが星空撮影専用として優れている点をお伝えします。
このレンズ1本で広角から超広角までの範囲をカバーしたズームレンズ
このレンズの最大の特徴は超広角範囲の15mmから広角域の30mmまでカバーできるズームレンズで、様々なシーンに応じて広角範囲を調整でき点です。
15mmなら天の川全体が取れ、30mmなら天の川の中央をダイナミックに捉えることができます。
例えば特定の星座を強調した星空撮影をする際は30mm範囲がちょうどよく、また天の川をできる限りダイナミックに取り入れたい場合は15mmの最大広角範囲で撮影するなど、撮影のシーンに合わせて調整ができるため、とても使いやすいのです。
暗闇の中でレンズ交換しなくて良いので助かります。
毎回星空撮影をする場所は異なりますよね?実際の取り入れたい範囲がその場で決まることが多い星空撮影ではズームによって焦点距離を調整できる点がとても便利です。
ズームレンズなのにすべての領域で最小f値2.8を一定に維持している化け物レンズ
TAMRON 15-30mm SP f2.8は焦点距離全域で最小f値2.8を維持しています。
なので15mmの超広角でも30mmの広角範囲まで同じ露出条件で撮影ができます。
描写がニコン純正の14-24mmレンズに引けを取らない解像感のあるコスパの高いレンズ
一般的にズームレンズより単焦点レンズの方が星空撮影レンズは良いとされていますが、このレンズのすごいところは解像感です。
レンズは画像の中心から外側に行くにつれて解像感が甘くなりますが、このレンズは15mmの範囲でも解像感が崩れにくく、引き締まった星空風景を撮ることができます。
絞り開放でもサジタルコマフレアがかなり少ない
星空撮影として適しているかどうかの判断基準となる「サジタルコマフレア」や「コマ収差」が絞り開放でも思ったほど影響が少ない点です。
このレンズを使ってみて一番優れていると感じた部分は、絞り開放f値2.8でも画像の端にある星の歪みが少ないという印象です。
価格が求めやすく最前線で使用できる星空レンズ
新品で100,000円前後、中古で50,000円前後
レンズはニコンとキャノン専用レンズとして販売されていて、新品で10万円前後で購入することができます。
よく比較される「AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED」は2007年に発売されたニコン純正のレンズですが、未だに新品で24万円前後もします。
となると、14万円の差があるなら14万円前後で買える別のレンズを購入した方が良いでしょう。
f値1.4や1.8など、より明るい単焦点レンズが発売されているが、20万円以上もする高額です。
ノイズの少ない高感度カメラがたくさんでているのでf値の明るいレンズにこだわらず、カメラ本来の性能に頼る時代になってきました。
※2021年は後継種(TAMRON SP 15-30mm F2.8 Di VC USD GS)のレンズが発売されています。
レンズの特徴
実際のレンズの特徴を紹介します。
比較的重い部類に入るこのレンズは総重量1,100gでレンズに近づくにつれて円筒が広くなっています。
フォーカスリングとピントリングは緩すぎず適度な抵抗がある
レンズはAF機能と手振れ補正がついており、ピントリングは標準な作りです。
フォーカスリングとピントリングは緩すぎず、適度な抵抗力があるので、手の動きと固定したい場所がイメージ通りに操作できます。
そのため、ピントを「∞」に合わせてからマスキングテープなどで固定する際もピントリングがずれてしまう心配がかなり減ります。
また一度ピントリングを「∞」に合わせてしまえば、そのままテープで固定した状態でもオートフォーカス中はピントリング自体が連動しないため、そのまま写真が撮れます。
一番簡単な方法は明るいうちにAFで「∞」に合わせ、AFからMFにしておけば「∞」が固定されます。カメラボディもMFにすることを忘れずに。
出目金タイプのレンズでも一体型になったフードにしっかりと守られている
レンズは出目金タイプとなり、レンズフードが一体化したデザインです。出目金タイプのため「レンズプロテクター」の装着は叶いませんが、レンズはフードの先端よりも内側のため、表面のレンズが破損しないようになっています。星空撮影では接写しないのでデメリットにはなりません。
レンズの手入れは簡単
プロテクターがつけられないので直接レンズにホコリや汚れが付きます。購入してから星空撮影ではあまり汚れず、軽いほこりや砂をブローで飛ばすくらいでした。購入して3年目に初めてレンズを直接クリーニングしましたが、レンズが滑らかでクリーニング剤がサッと拭き取れました。
TAMRON SP 15-30mm F/2.8 Di VC USD A012N(ニコン用)で撮った星空写真をレビュー
2017年からこのレンズを使用していてとても満足して、その理由をまとめました。
【検証】f値の違いによるサジタルコマフレアの差 - TAMRON SP 15-30mm F/2.8
「サジタルコマフレア」や「コマ収差」がどの程度発生するか大事な要素ですが、実際に絞り開放のf/2.8から数段階絞った写真を比較しました。
撮影条件:
- NikonD750
- 焦点距離:15mm
- ISO:3,200
- 露出時間:20秒
- ライティングソフトで見え方を調整
f値2.8の絞り開放の周辺の星は原寸大レベルで星が十文字のようになっていますが、目立つほどのサジタルコマフレアはありませんでした。
拡大すれば星の歪みは目立ちますが絞り開放でもこの程度で済むので、実用レベルが高い状態に驚きです。タイムラプス動画を作成する場合は絞り開放で問題無さそうです。
1段絞ってみましたが、収差で特徴の十文字のように見える星は殆ど目立たなくなりました。1段絞ったf/3.2付近がお勧めです。中心の星と画像外側のコマ収差の差が少ないレンズに驚きです。しかもこの価格で。
2段階絞ったf値3.5の場合は殆どコマフレアが見えなくなり、全体的に画像がより引き締まってみます。正直f/3.2とほとんど変わらないため、あとは撮影者の好みかと思います。
絞り開放から4段階絞った状態での画像周辺の収差は殆ど見られませんでした。逆にf/4.5まで絞るとISO感度を上げないと20秒より短い露出時間で星を捉えることが難しくなり、後にRAW画像からの現象の際にノイズが目立つようになります。
サジタルコマフレアを低減し、できる限り明るく星空を映す場合、1段絞ったf/3.2あたりが一番バランスが良い事がわかりました。
絞り開放2.8と絞り4.5のサジタルコマフレアの違い
拡大画像で絞り開放(f/2.8)とf値4.5を比較してみました。
絞り開放f/2.8の場合
f/4.5(絞り開放から4段絞った場合)
コマ収差の比較画像は実寸サイズを切り取っておりますが、このレンズのすごいところは絞り開放f値でほとんどコマ収差がなく、f/4.5とほぼ同等だということです。荒さがしですが確かに絞り開放の画像は若干星が十文字のような形ですが、ほぼ点として映っています。
たまたま入手したレンズが特殊でコマ収差がほとんどない「当たりレンズ」だった可能性も考えられますが、絞り開放で付近で撮れる星空レンズはかなりのアドバンテージです。
レンズの大きさと重さ
- 重さ1,100g
- 長さ142.5mm
- 最大径94.8mm
実際このレンズは重いです。総重量は1,100gで常に持ち運びながらの撮影は疲れてしまいます。星空撮影は三脚に乗せて撮影をするため、レンズの重さはデメリットになりません。むしろレンズの重さが相乗効果となり、風の影響受けにくく三脚全体がしっかり地面に固定されるなどプラスな面もあります。
レンズに特殊フィルターやカバーを取り付けることができない
写真の通りこのレンズは魚眼のように突き出ているため、レンズにフィルターやカバーを付けることができません。ソフトプロトンやなどの効果を撮影の段階で得ることはできないレンズとなります。
ズームレンズを活かした幅広い撮影が可能
広角領域の30mmから超広角15mmまでの範囲をこの1本でカバーできる点が最大の魅力です。15mmの超広角の範囲は夜空を目一杯映すことができる反面、余計な背景も取り込んでしまうことも考えられます。撮りたいシーンに合わせて焦点距離を変えられるのはこのレンズを持っているメリットです。
15mmの場合
30mmの場合
星空撮影をする際は20mm前後で撮影することが多いですが、蓼科山の風景を取り入れた星空の場合、30mm付近の範囲がバランスが取れていると思います。このレンズ1本で、他15mmと30mmの単焦点レンズ2つ分の役割を果たしてくれます。
15mmの超広角と星空の映り方
- 天の川を全容を映したい場合
15mmの撮影範囲は超広角となり、天の川を広範囲で映すことができます。ただ天の川が少し小さく写りますので、手前に建物や何かのオブジェクトを取り入れることでダイナミックな写真となります。
20~30mmの広角と星空の映り方
- 天の川の中心を撮る場合
30mm」の範囲は標準に近い広角域ですが星を点として捉える場合は20秒以下が理想です。上の天の川の写真は25秒の露出だったため、地球の自転の影響で星が伸びてしまいました。30mm付近で星がぶれずに撮るためには絞り開放のf/2.8でISOは6,400の15秒くらいが理想です。
F/2.8は星空撮影レンズとして最適か?
星空レンズとして最小F値2.8の使い勝手はどうなのでしょうか?今はf値1.4や1.8などもっと明るいレンズが出てきてます。f値は確かに小さいレンズが星空撮影では有利ですが、今後はカメラボディの性能がどんどん高くなるので、ISO6,400や128,000でもノイズがほとんど出ないカメラが出てくるかと思います。今でも十分星空レンズとして発揮できますが、今後も性能を活かせる星空レンズだと思います。
他のレンズとの比較検討した場合
星空レンズの購入を検討していると他のレンズとの比較検討は当然すると思います。このレンズを購入するか検討する時に比較対象となるレンズは下記あたりかと思います。
カメラレンズ | 新品の価格 |
---|---|
SIGMA 14-24mm F2.8 DG HSM | 150,000円 |
SIGMA 14mm F1.8 DG HSM | 170,000円 |
SIGMA 20mm F1.4 DG HSM | 200,000円 |
AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED | 240,000円 |
AF-S NIKKOR 20mm f/1.8G ED | 84,000円 |
AF-S NIKKOR 24mm f/1.4G ED | 250,000円 |
できる限り超広角の15mm前後でf値は極力1.8以下、そして料金もお手頃だとなお良し!しかしどれが一番自分に合っているかわからないと思います。シグマのアートシリーズはコマ収差が少なく、明るく広角のレンズの種類が豊富です。しかし料金が比較的高めです。
まず星空レンズとして単焦点レンズか広角ズームレンズのどちらか迷います。極論、金銭的に余裕がある場合は単焦点レンズを買えばいいと思います。その場合はSIGMA 20mm F1.4 DE HSMがお勧めです。絞り開放でもコマ収差が少なく良いレンズとされています。
ニコン純正の「AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED」はf2.8の明るさを保ち超広角の14mmをカバーしており、このレンズ1本ですべてが対応できますが金額がとにかく高く、手が届きません。
「TAMRON SP 15-30mm F/2.8」f値2.8はそれなりに明るいレンズで、絞り開放でもコマ収差は少なめで、且つ料金も求めやすい価格なのでバランスの取れたレンズだということがわかるかと思います。
ニコカメラがTAMRONレンズを購入に至った経緯
- もう少しコマ収差の少ない星空レンズが欲しい
- SIGMA 20mm f値1.8のレンズを持っていたのでそれよりも超広角が欲しい
- AF-S NIKKOR 14-24mmとにたような超広角範囲のズームレンズがあると色々なシーンで星空が撮れる、けど料金が高い
- 出来る限りレンズ1本で星空撮影をしたい
上記のようなイメージで叶えてくれるレンズがTAMRONでした。購入に至った経緯は下記のようなイメージでした。
コマ収差が少なく、超広角範囲のf値の小さいレンズが欲しい。しかし単焦点レンズは金額が高めなのが難点。既に20mm範囲のレンズを持っていたのでそれよりも広角範囲のレンズが欲しい。検討していた「AF-S NIKKOR 14-24mm」は幅広く対応できるズームレンズの場合は1本で様々なシーンに対応できるため、星空撮影レンズとしては優秀だが料金が24万円以上で購入が難しい。ニコン純正製品に囚われず、互換性のあるレンズを探してみたほうが良いと思い「TAMRON SP 15-30mm」を検討。ニコン純正と比べると14万円も安く購入できる点が魅力だが、1,100gの重さに懸念を持つ。しかし星空撮影においては重さはデメリットにならない。レンズが出目金タイプのため、プロテクターを付けることはできないが星空撮影において接写して撮ることが少ないためプロテクターは不要。星空撮影におけるコマ収差は極力少なくなっており、ズーム領域全てにおいてf値2.8の明るさは星空撮影には十分。ボディの性能で感度を上げて撮影すれば短い露出でメリハリの出る星空が写るため、購入を決断。
結果として、このレンズ1本で15-30mmの範囲をカバーできることで使う頻度が格段に上がり、今も最前線で使っています。
このレンズを購入してよかったこと
温度差の激しい場所でもレンズが曇りにくかったです。防汚コートがしっかりしており、ほこりや水滴がつきにくいだけでなく、夜露でレンズが曇ることもほとんどありませんでした。レンズフードは一体型となっているため、フードの周りに結露が着き、レンズが曇らずに撮影ができているのだと思います。
ピントリングに適度な抵抗があるため微調整がしやすく、また緩すぎないのでマニュアルで無限大(∞)にした後のテープ留めなどが容易でした。
レンズキャップはかぶせるタイプのため、暗闇の中でもカメラを三脚にセットしてから脱着が簡単にでき、撮影が終わった後でも容易にかぶせるなどストレスなく撮影の準備と撤収ができます。
まとめ
TAMRON SP15-30㎜ F/2.8 Di VC USDは「安い、明るい、超広角、コマ収差少な目」が揃った星空レンズとして総合的に優れております。迷ったらコレかなと思います。
TAMRON SP 15-30mmが星空レンズとして最大限活かせる条件
- f値は絞り開放(f/2.8)または1段絞ったf/3.2
- ISOは1,600~3,200、またはノイズが少ないボディなら一気に6,400
- 露出時間は15㎜なら25秒以内(理想は20秒)、30mmなら15秒以内が理想
- NikonならFXフォーマット対応ボディ
絞り開放の撮影でも画像中心から外側の星のサジタルコマフレアやコマ収差が少なく、パソコンの全画面で見ても周辺画像の甘さは気にならないレベルです。ズームレンズで単焦点レンズに引けを取らないポテンシャルの秘めたレンズで、このレベルで当時100,000円くらいで新品で購入できるため、持っていても損はないレンズです。
レンズのポテンシャルとそれを引き出せるボディが巡り合った時、ものすごい星空撮影ができると思います。このレンズを手にすると星空撮影が楽しくなります。