プラトー・ポイントの表示

グランド・キャニオン国立公園

【日帰りハイキング】ブライト・エンジェル・トレイルを歩き『プラトー・ポイント』まで行ってみた

更新日:

ブライト・エンジェル・トレイルはグランド・キャニオン国立公園で最も有名なトレイルです。

大渓谷深部へ続くトレイルの先は大地を深く削るコロラド川を越えて反対側のノース・リムまで続いています。

この記事では日帰りで行くことが許可されている終着地点『プラトー・ポイント(Plateau Point)』までの道のりと行く前に知っておきたい事前知識や注意点を写真と共にまとめました。

目次

リムからコロラド川まで続く「ブライト・エンジェル・トレイル」と途中で分岐した終着地点の「プラトー・ポイント」とは?

グランド・キャニオン国立公園のトレイルは他の国立公園のトレイルと比べて突出した2つの特徴があります。

  1. 出発地点からの高低差が1,000メートル以上ある
  2. 距離が長く日帰りでの往復が不可能である

海抜2,000メートル越えのサウス・リムを出発地点とした長いトレイルはどれも1日で回ることができません。

往復すると高低差は2倍となり、その過酷なトレイルは『ブライト・エンジェル・トレイル』と呼ばれています。

ブライト・エンジェル・トレイル(Bright Angel Trail)とは?

ブライト・エンジェル・トレイルのルート
サウス・リムからのブライト・エンジェル・トレイルのルート(オフィシャルHPの画像を転用)

『ブライト・エンジェル・トレイル』はグランドキャニオン国立公園のサウス・リムからコロラド川手前の『River Resthouse』までの片道12.4kmのトレイルです。

出発地点からの高低差が1,320メートルもあり、これは東京スカイツリーの高さ634メートルの約2倍です。

往復すると2,600メートルもの標高差となり、急な勾配や足場の悪い砂地などトレッキングというより、むしろ登山と表現した方が適切です。

トレイルの前半はサウス・リムの頂上から大渓谷中階層まで900メートル以上を常に下り坂で進み、中盤はなだらかな道が続きますが日影がほとんどなく夏場は灼熱の地獄と化します。

後半はコロラド川までもう一段階下り、更に温度は上昇し熱中症の危険が伴う大変難易度の高いトレイルです。

所要時間は1日またはそれ以上を費やします。

ブライト・エンジェル・トレイルの終着地点はコロラド川までですが、川を越えてからもトレイルは続きます。コロラド川を越境してから名称が「ノース・カイバブ・トレイル」に変わりノース・リムのトレイルヘッドまで22㎞続いています。

両方のトレイルを合わせると総全長38kmのトレイルで、サウス・リムからノース・リムまでの移動時間に2日以上掛かります。

ブライト・エンジェル・トレイル経由でコロラド川またはそれ以上を進む場合、日没までに往復することはできず、その先にあるブライト・エンジェル・キャンプグランドまたはファントム・ランチでの滞在が必須です。

そのため、日帰りで行くことが出来る場所はインディアン・ガーデンがら分岐した終着地点の『プラトー・ポイント』までとなります。

プラトー・ポイント(Plateau Point)とは?

『プラトー・ポイント』とはブライト・エンジェル・トレイルの中盤にあるインディアン・ガーデンから分岐した『プラトー・ポイント・トレイル』の終着地点で、切り立つ崖からコロラド川が一望できる場所です。

プラトー・ポイントまでが日帰りで往復することができる最長の場所で片道9.8㎞のトレイルです。

グランド・キャニオンの深部に行けば行くほど古い地層を見ることができ、このトレイルの見どころは大渓谷を下るごとに地球の歴史を遡りながら自分の足で歩くトレッキング体験です。

今も原始の地層を侵食しているコロラド川が一望でき、地球の歴史を辿りながら歩けるため、グランド・キャニオンの観光でも人気のスポットになっています。

ブライト・エンジェル・トレイルを歩き、プラトー・ポイントを目指す

まずは出発地点から『プラトー・ポイント』までの道のりを重要な拠点ごとにまとめました。

■最終目的地のプラトー・ポイントはどこに?

遠くから見るプラト・ポイント
サウスリム上部から見たプラトー・ポイントの場所

プラトー・ポイントはサウス・リムから上の画像に見えますが、そこに辿り着くためにはとても長い道のりが待ち受けています。

ブライト・エンジェル・トレイルからプラトー・ポイントまでの片道は9.8㎞、出発地点からの高低差は940mです。

ブライト・エンジェル・トレイルは途中に休憩場所や給水所が点在していますが、適切な装備と時間配分そして環境を読む適切な判断が必要です。

それでは、プラトー・ポイントまでの往復の概要を紹介していきます。

ブライト・エンジェル・ポイントの出発地点

ブライト・エンジェル。トレイルの出発地点
ブライト・エンジェル・ロッジのすぐ裏手がトレイルの出発地点

出発地点はRim Trail沿いにある「ブライト・エンジェル・ロッジ」の施設の裏手にあります。

私がプラトー・ポイントを目指した時期は3月下旬頃でしたが、出発地点のリムは寒く防寒対策をして向かいました。

この時期はまだ雪や氷が一部残っており、足場が滑りやすい状況でした。出発時間は朝8:30です。

Second Tunnel まで|出発地点から1.5㎞付近

2nd Tunnel
スタート地点1.5km進んだSecond Tunnel

序盤の道は崖に沿ってゆっくりと下りながら軽快な足取りで進んでいきます。坂道に逆らうことなく引っ張られながらどんどん進んでいくことでしょう。

出発して200メートル程行くとFirst Tunnelがあり、更に越えた先にSecond Tunnelが見えてきます。

グランド・キャニオンの壁
存在感のある渓谷の壁
  • 場所: Lower Tunnel(Second Tunnel)
  • 8:53分(出発から23分)
  • 出発地点からの距離: 1.5Km付近
  • 出発地点からの標高差: -180メートル
  • ここからの戻り時間: 約1時間前後
  • 難易度: 簡単

出発地点からはスムーズに下っていきます。渓谷を下るためカーブが多く、傾斜のあるトレイルが続きます。観光目的でグランド・キャニオンの中を体験する程度で来れる最適な場所です。

1.5マイルの休憩小屋(1.5 miles Resthouse)まで|出発地点から2.4㎞付近

1.5マイル付近の風景
出発地点から1.5マイル付近の風景
  • 場所: 1.5 Mile Resthouse付近
  • 9:15分(出発から45分)
  • 出発地点からの距離: 2.4Km付近
  • 出発地点からの標高差: -340メートル
  • ここからの戻り時間: 約1時間~1時間30分前後
  • 難易度: 普通
  • 給水(5月~9月までの期間のみ)、トイレ、緊急電話あり

さらに渓谷を下り道も細くなってきます。この辺りでは300メートルほど渓谷を下っており、標高が下がり太陽の高度上昇に伴い気温が徐々に上がってきます。

道中に後方から物資を運ぶミュールの群れに遭遇するので、斜面側に一歩下がり、ミュールが通り過ぎるまで静止しておきましょう。

1.5 mile Reshouseに最初の給水場所(5月~9月限定)やお手洗いがあります。一度ここで休息をしっかり取って体調チェックを行いましょう。

3マイルの休憩小屋(3.0 miles Resthouse)まで|出発地点から4.8㎞付近

3マイルの小屋付近のトレイルの風景、周りは大渓谷の岩に挟まれた風景
トレイルの外は崖になっているので、足を踏み外さないように
3 mile Resthouseの風景
ようやく3マイル休憩小屋に到着。だんだんと気温が上昇してくるでしょう。
  • 場所: 3.0 Mile Resthouse付近
  • 10:02分(出発から1時間32分)
  • 出発地点からの距離: 4.8Km付近
  • 出発地点からの標高差: -645メートル
  • ここからの戻り時間: 約2時間~3時間前後
  • 難易度: やや高め
  • 給水(5月~9月までの期間のみ)、トイレ、緊急電話あり

ここまでの道のりはずっと下り坂のため、それほど体力を使わずにどんどん進むことができます。ただし、ここから戻るとすべて上り坂の登山のような状況になります。

戻り時間は斜面を登るため往路の1.5~2倍の時間がかかります。お昼頃に到着して引き返した場合、夕方前までには戻れるイメージです。

ここまでで体調がすぐれかったり、足に不調がある場合は必ずここで引き返してください。春先でもこの付近は気温が30度以上になることもあります。実際に直射日光により体感温度は30度以上に感じました。

Indian Garden Campground まで|出発地点から7.2km 付近

インディアンガーデン付近の風景
険しい渓谷を下り、少しずつ穏やかな道になってくる。
  • 場所: Indian Garden Campground付近
  • 10:50分(出発から2時間20分)
  • 出発地点からの距離: 7.2Km付近
  • 出発地点からの標高差: -925メートル
  • ここからの戻り時間: 約3時間~4時間前後
  • 難易度: 高め
  • 給水(通年)、トイレ、緊急電話あり、レンジャー派出所あり、キャンプ場あり

インディアン・ガーデン・キャンプ場手前まで大渓谷をずっと下ります。このあたりから気温の上昇が激しくなり、春先でも30度近くの気温になります。リムとは明らかに気候が異なります。

この場所から引き返す場合は3時間以上は掛かるため、自分や同行者の体力の確認と戻り時間をしっかりと計算してください。

インディアン・ガーデンに正午頃に到着する場合、この時点で戻っても夕方前の到着になると思います。

インディアン・ガーデンは唯一通年給水ポイントがあります。トイレやピクニックができるテーブルがあるので食事をしながら体力を回復させましょう。

このエリアは唯一森のように木が多く生えており、日影もあるためここで十分な休憩を取るようにしましょう。

この先からプラトー・ポイントまでは炎天下の中、影が一切ない不毛の大地を突き進んでいくことになります。ここまでで水が不足している場合は必ず水を補給してください。

夏の時期で日帰りハイキングをする場合はインディアン・ガーデンより先には行ってはいけません。高確率で熱中症になり、命の危険があります。

私は通常よりも早いペースでインディアン・ガーデンに到着しましたが、早すぎるペースも体力の消耗が激しくなるため気を付けなければなりません。

インディアン・ガーデンの先からプラトー・ポイントが2つに分かれますが日帰りの場合は進行方向に左側の『プラトー・ポイント・トレイル』を目指します。

灼熱の大地を進んだ先にあるプラトー・ポイントまで|出発地点から9.8㎞(日帰りで行ける終着ポイント)

プラトー・ポイントの表示
プラトー・ポイントまでもう少し
  • 場所: Plateau Pointまで
  • 11:55分(出発から3時間25分)
  • 出発地点からの距離: 9.8Km付近
  • 出発地点からの標高差: -940メートル
  • ここからの戻り時間: 約5時間~6時間前後
  • 難易度: より高め
  • 給水(5月~9月まで)

インディア・ガーデンから200メートル程進むと『プラトー・ポイント・トレイル』への分岐があるので左の道に進みます。そこから先は2.6㎞の平坦な道となりますが、この道が炎天下の場合は一番きつい道となることでしょう。

『プラトー・ポイント・トレイル』は空気が乾燥しており、太陽に照らされた大地は猛烈な暑さになります。

春先でも30度を超える気温は異常です。日影が一切なく常に太陽に照らされ続けます。真夏でこの道を歩くことは自殺行為です。

このあたりの大地にはサボテンが多く自生しており過酷な環境であることが容易に想像できます。

プラトー・ポイント・トレイルの風景
インディアン・ガーデンからプラトー・ポイントの道のりは灼熱の大地

このエリアは乾燥し昼間の気温の上昇が激しいため、熱中症や脱水症状にならないようにこまめな水分補給と体調管理を行いながら進みましょう。

3月下旬でも手元の気温は32度もあり、日差しが強く体感温度はより暑く感じました。

サウナにいるような感覚です。この場所で息切れや急な汗、頭痛やめまい、吐き気、手足のしびれなど、少しでも熱中症の症状があればすぐにインディアンガーデンに引き返してください。

夏は45度まで上がるようで、国立公園では真夏のトレイルを警鐘しています。人間の体温を遥かに超える気温の中での歩くトレイルがいかに危険か想像できるでしょう。

グランド・キャニオンの中から見た風景
後ろを振り返るとかなりの距離を歩いたことがわかります

プラトー・ポイントを目指してひたすら進みますが、後ろを振り返ると出発地点が遠すぎて見えません。

この辺りはサボテンと乾燥に強そうな低層植物が茂っています。

プラトー・ポイント手前の風景
プラトー・ポイント直前の風景

プラトー・ポイント直前の風景です。この場所から数十メートル進むと眼下にコロラド川が一望できる渓谷が見えてきます。

プラトー・ポイントから眺めるコロラド川の絶景

コロラド川と大地の風景
プラトー・ポイントから見たコロラド川の風景
  • 滞在時間:  約20分
  • 気温:    32度(体感温度40度)/ 3月下旬頃

出発してから4時間~5時間ほどでプラトー・ポイントに着くことができます。私たちはペースが速かったので3時間半ほどで着くことができました。コロラド川とグランド・キャニオンの渓谷を間近で見える絶景ポイントです。

プラトー・ポイントから見えるコロラド川
プラトー・ポイントの崖から見える風景

コロラド川が茶色く濁っていますが、これは今もグランド・キャニオンの大地を削り続けているからです。

プラトー・ポイントは5月~9月の夏の時期のみ給水場がありますが、トイレや休憩所はありません。熱中症の心配もあるので滞在時間は長くても30分以内にしましょう。

朝に出発してもプラトー・ポイントの到着時間は昼頃になります。気温も一番高い時間帯になるため、すぐにインディアン・ガーデンへ引き返しましょう。

日没前にブライト・エンジェル・トレイルの出発地点に戻る

ブライト・エンジェル・トレイルへ帰還している風景
来た道を戻ります

個人差はありますが一般的に帰り道は往路時間の1.5~2倍の時間がかかります。

帰り道のトレイルで一番大切なこと

  • 体力が尽きる前に戻ること
  • 日が暮れる前に戻ること
  • ペースを乱さないこと

帰り道は4時間以上の登山のような道のりです。定期的に小休憩をしながら元来た道を戻りますが可能な限ら立ったまま休憩しましょう。

一度でも座ってしまうと疲れていて立ち上れなくなる可能性があるため、ペースを乱さず立ち止まって休憩するように心がけてください。

日没前に帰ることも重要です。暗闇の中のトレイルは非常に危険で、つまずいて谷底に落ちる危険があるため、プラトー・ポイントから帰る場合は必ず日没前には戻ってこれるようにしてください。

帰り道は戻る目的のためだけのトレッキングで精神的にも堪える行程です。自分のペースを保ちながら一歩一歩進んでいきましょう。

私は無我の境地でひたすら歩き続け、4時間19分でブライト・エンジェル・トレイルの出発地点に戻っています。

プラトー・ポイントから出発地点までの復路所要時間|4時間19分

  • プラトー・ポイント出発時間12:15分
  • インディアンガーデンに到着|12:45分
  • 3 mile Resthouseに到着|14:18分
  • 1.5 mile Resthouseに到着|15:30分
  • Lower (Second)Tunnelに到着|15:50分
  • ブライト・エンジェル・トレイル出発地点に到着|16:34分
夕日に染まるグランド・キャニオンの風景
無事に戻ることができました

プラトー・ポイントからインディアン・ガーデンの道は高低差が無く往路と同じ時間帯で進むことができますが、その後のリムを昇る道は険しい道のりです。

ほぼ坂道で急な勾配が延々と続くため後半になるほど体力が消耗します。膝や足に相当な疲労が溜まり、集中力が切れてくるので怪我をしないようにしましょう。

往復約20km、所要時間8時間のトレイル体験はとても達成感のあるアクティビティです。

ブライト・エンジェル・トレイルからプラトー・ポイントまでの概要

ブライト・エンジェル・トレイルの各ポイントまでの距離と標高
図①: ブライト・エンジェル・トレイルの詳細(オフィシャルHPより)
グランド・キャニオン渓谷のトレイルの相関図
図② グランド・キャニオンのトレイルの相関図(オフィシャルHPより)

ブライト・エンジェル・トレイルはサウス・リム上部からコロラド川まで1,320メートルも下っていきます。上の表の見方ですが、3色に分かれており、それぞれの場所までの難易度を表しております。

  • グリーンラインはちょっとした観光で往復できるエリアです。トレイル開始付近から2つ目のトンネルまでの往復は短時間で楽しむことができます。
  • イエローラインはそれなりに準備をしなければ行くことが難しいエリアです。往復で3時間以上掛かります。
  • レッドラインは十分な計画と装備で行くことができるエリア。日帰りで往復できる場所から泊まり込みが必要な場所まであり、完全に上級者向けのエリアです。

プラトー・ポイントまで片道9.8km、往復約20kmのトレイルで、往復所要時間は9~12時間です。標高差は片道940メートルで往復1,860メートルもあります。

プラトー・ポイントへは図②のIndian Garden Campgroundを越えるとプラトー・ポイント・トレイルに分岐して2.6㎞ほど進んだ先にあります。

ブライト・エンジェル・トレイルを歩く上でのルール

トレイルの風景
トレイルを歩く上で、ルールをしっかり守っていきましょう

トレイルを歩く上で守らなければならないルールがあります。しっかりとルールを順守しましょう。ルールを守ることで過酷な環境下での生存率が上がります。

■トレイルは2人以上で行動する

統計的に1人で行くトレイルは事故率が高いだけでなく、熱中症になった時の生還率が低い傾向にあります。

一人で解決できない問題に直面することは、二人以上なら対処できることが圧倒的に多いのです。国立公園側もトレッキングをする場合は2名以上で行動するようにと注意喚起しています。

■お手洗いはトイレで行うこと

お手洗いは必ずトイレでしてください。

■ミュールが来たらトレイルを譲る

トレイルを歩くミュールの一行
狭いトレイルを歩くミュールの一行

トレイルトレッキング中は荷物や観光客を乗せたミュールの一行に出会うことがあります。ミュールは基本右側通行をしています。近づいてきたら斜面側に寄り、通り過ぎるまで静かに見送りましょう。谷や崖側には決して移動しないでください。蹴り飛ばされて崖下に落とされます。

■上に登るハイカーは右側通行

往路でやってくるハイカーと遭遇したら上に登るハイカーは右側通行をしましょう。

■他のハイカーに道を譲る際は声掛けをしっかりする

ハイキング中は他のハイカーと歩くスピードが異なる為、追い抜いたり追い越されたりることがあります。道を譲る際や追い抜く際は必ず声をかけてお互いにコミュニケーションを取りましょう。

■トレッキング中は叫ばずできる限り静かに楽しむ

急な叫び声は他のハイカーを混乱させたり、思いがけない事故につながります。特にこの記事を読んでいる方はたいていは日本語を話す方が多いと思われますが、アメリカで知らない言語で叫ばれると周りのハイカーはとても混乱します。

■ゴミはすべて持ち帰る

トレイルにはゴミ箱がありません。必ずゴミは全て持ち帰りましょう。

プラトー・ポイントを目指す前に必要な準備とは?

『プラトー・ポイント』へは気軽に行けるような場所ではありません。グランド・キャニオンのトレイルは想像以上に過酷な環境で事前の準備と入念な計画が必須です。

まずお伝えしたいのが『プラトー・ポイント』は総合的な判断力と予備知識がなければ行かないでください。

国立公園の統計によると毎年250名以上の観光客が何らかの問題でレスキューされており、その中でもトレッキング中の脱水症状や熱中症で亡くなる方がいます。

しっかりと準備と対策をすることで、リスク最小限に抑えることができます。

なぜグランド・キャニオンのトレイルは過酷なのか?

そもそもなぜグランド・キャニオン国立公園にあるトレイルは過酷なのでしょうか?その理由を説明します。

高低差が1,000メートル以上!長いトレイルは体力の配分が難しい

出発地点と目的地までの高低差があるため十分な体力が必要になります。帰りは山道を登るため、歩く速さは往路の1.5~2倍の時間がかかります。

往路は下り坂でどんどん進んでいきます。登山の経験が無くても意外と余裕で下まで降りる事ができるでしょう。

しかし復路はそうはいきません。帰りの体力がなくなり動けなくなることがあるため、出発地点から離れるほど戻ることが困難になります。

大渓谷内部の気温は40℃以上|日影がないため熱中症になりやすい

真夏のグランド・キャニオン渓谷の中腹付近の気温は45℃を越え、春・秋でも30℃以上の高温地帯となります。

このトレイルを難しくする一番の理由が高温による熱中症です。

トレイルは日影がほとんどなく、常に太陽光を全身に浴びた状態で何時間も歩くため、熱中症になりやすいのです。

高温化で一度でも熱中症の症状になると体温が下がらないため自力回復は難しく、どんどん熱中症が悪化します。レスキュー隊もすぐに向かえないため、高確率で命を落とします。

サウナに3時間、4時間入りながらハイキングしているような状況をイメージしてください。

2020年の6月ですが、グランド・キャニオンを訪れた中年女性がトレイル中に熱中症で亡くなりました。レスキュー隊の救助も虚しく、到着する前に大事に至ってしまったというケースがありました。

グランド・キャニオンのトレイルを歩く上で一番気を付けないといけないのが『熱中症』です。

休憩場所が乏しく、時間配分や体調管理が難しい

トレイルのいくつかのポイントに給水場と若干の休憩所が点在しておりますがそれでも不十分です。炎天下の中で奪われた体力は過酷な状況の中では戻りづらく、往復の距離が長いため戻り時間の体力配分が大変難しいのです。

高低差のあるトレイルや長距離、そして気温によって、難易度の高いトレイルに分類されます。

プラトー・ポイントを目指す前に

事前準備ポイント①

トレイル前日にグランド・キャニオン国立公園内の宿泊施設または近場の町で宿泊をする。

まず前提として体調が少しでも優れない場合は長距離のトレイルは控えましょう。プラトー・ポイントまでは往復で平均9~12時間もかかるため、万全の体調でトレイルを望むべきです。

グランド・キャニオン国立公園内または近場の町で前日に一泊し、しっかり食べて睡眠時間を取るように心がけてください。すべての基本です。

トレイルから帰還した後はかなりの体力を消耗しているため、トレイル当日の日も近場で宿泊することをお勧めします。ちなみに私はこのトレイルを体験した後、車を運転しようと試みましたがあまりの疲労でアクセルペダルを踏むことができませんでした。

事前準備ポイント②

ビジターセンターでトレイル情報を確認しましょう。その日の気温や天候を必ず確認してからトレイルを楽しみましょう。できる限り真夏の7月、8月の日中のトレイルは絶対に避けましょう。

真夏の時期のトレイルは非常に危険で、国立公園側もその時期に行くことを推奨しておりません。気温45度以上の炎天下で影がない場所を10時間歩きっぱなしの場合、どのような結果が待っているか想像できますよね。

トレイル中の心得

それではプラトー・ポイントを目指すうえでの心得をまとめました。

適度な水分補給

のどが渇く前に定期的に水分補給をしましょう。この時一度に大量の水を飲まないでください。ハイキング中は多量の汗をかきます。35度以上の高温の中で数時間も歩くと人は尋常でない量の汗をかき、大量の塩分が汗で放出されます。

水分の過剰摂取による「低ナトリム血症」にならないように気を付けてください。

■エネルギーの補給

食料はこまめに摂取するように心がけてください。エネルギーとなる淡水化物や塩分のある吸収率の良いバランス栄養食がおすすめです。これらの食材は体温を調整するうえで大切な要素となります。カ○リーメイト的なものを持参すると良いかと思います。(私はちなみにフルーツ味派です)

自分の体調としっかり向き合う

トレッキング中にめまい、吐き気、息切れ、手足のしびれなどの症状が少しでもあれば熱中症を疑い、適切な水分補給と食料をとり、休憩してください。

体力の回復に1時間以上かかるため十分に体を休ませてください。このような状況になったら必ず来た道を引き返してください。この判断をできるかどうかで命を落とす危険がかなり減ります。

一緒に歩くメンバーの体調を気遣う

トレイルは必ず2名以上で行動してください。そしてどちらかの体力が弱い方の状況に合わせて時間や休憩の調整を行うように心がけてください。

プラトー・ポイントまでに必要な装備

  1. 【必須】最低でも1人2リットル(夏場は4リットル)以上の水
  2. 【必須】塩分や高カロリーの食料
  3. 【必須】けがをした際の応急処置キット(絆創膏や消毒薬、ガーゼやマスキングテープなど)
  4. 【必須】ビジターセンターや国立公園でもらえる地図やトレイルマップ
  5. 【あると便利】ヘッドライトや予備の電池(万が一日中に戻れない場合)
  6. 【必須】日焼け止め、後頭部までカバーできる帽子、サングラス
  7. 【必須】笛、持ち運べる手鏡(救難の際)、携帯電話
  8. 【必須】ハイキングシューズ
  9. 【あると便利】トレッキングスティック(必要な方)
  10. 【必須】羽織る洋服(炎天下の場合は長袖&長ズボン着ることで過度な水分蒸発を抑える)
  11. 【あると便利】小型扇風機
  12. 【必須】カメラ(最高の風景を撮る)

季節によって異なるトレッキングの環境の違い

トレイルヘッド(出発地点)とアリゾナ川近辺の高低差は1,000メートルを越えるため、標高によって気温や気候が全く異なります。

トレイルを歩く時期によって異なる環境があることを知っていただきたいことと、絶対に行ってはいけない時期もある為トレイルを計画している方は参考にしていただければ幸いです。

冬の時期(12月~2月)

  • サウスリム上部の気温はマイナス7度から7度前後で、冬の時期は雨や雪が降りやすく、急な天候の変化に注意が必要です。大渓谷内部の気温は3度~10度前後なります。渓谷上部は雪や氷で滑りやすいため気を付けてください。防寒着はしっかりと準備し保温できる水筒に暖かい飲み物があると良いかと思います。

春または秋の時期(3月~5月または10月~11月)

  • サウスリム上部の気温は0度から18度前後で、大渓谷内部の気温は13度~32度(日によってはそれ以上の気温)くらいとなります。この時期は上部と大渓谷内の温度差があり、服装の選択が難しくなります。トレイル開始直後の上部は寒いため着込んでからのトレッキング開始となります。しかし大渓谷内部は昼間の気温上昇に伴い涼しい恰好が最適です。水の携帯量は2リットル以上、そして適度な食料を持参して向かいましょう。

私は3月下旬にプラトー・ポイントを目指しましたが、グランド・キャニオン内部で手元の温度を測ったら34度もありました。

夏の時期(6月~9月)

  • サウスリム上部の気温は10度~30度前後で、大渓谷内部の気温は25度~45度前後になります。特に7月~8月の大地は乾燥しており高温と太陽光の熱により、体感温度は60度を超えてきます。常にサウナの中にいるような状況です。夏の時期は水は最低でも4リットル以上は携帯し、熱中症にならないためにありとあらゆる対策を講じる必要があります。
  • 国立公園のガイドラインによると7月、8月の午前10から午後4時までの日中のハイキングは避けるように警告が出ております。
  • 極力、7月~8月のトレッキングは控えてください。

まとめ

今回ブライト・エンジェル・トレイルを実際に歩き、プラトー・ポイントを目指しました。安全にトレイルを歩くために下記のことをしっかりと念頭に置いて楽しんでください。

  1. 体力を温存するために前日からの睡眠としっかりとした食事を心がける
  2. 体調がすぐれない場合は行かない
  3. 7月、8月の挑戦は控える
  4. 夜間のトレイルはできる限り避ける
  5. 水は一人最低2リットル(夏場は4リットル)以上、食料は高カロリーと塩分の多い食材を持ち込む
  6. トレイル中はこまめに水分・エネルギー補給と休憩をし、熱中症にならないように気を付ける
  7. 体調が悪い場合はその場で引き返す決断をする。
  8. トレイルは一人では行かず、必ず2名以上で行動をする
  9. 歩く速さは一番遅い人のペースを維持し、体力的に弱い方に併せて行動する
  10. ゴミはすべて持ち帰る、トイレは決まった場所で行う
  11. ミュールが来たら大声を出さず、トレイルの斜面側に下がり通り過ぎるまで静かにする
  12. グランド・キャニオンをとことん楽しむ

しっかりと準備をしてトレイルを楽しんでください。グランド・キャニオンでトレイルを歩く方、安全で楽しいグランド・キャニオンのトレッキングを願っています。

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